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「将来のために今我慢して貯金するなんて馬鹿らしい」という意見があります。「確かにそうかも」と思うかもしれません。しかし、やはり貯金は万一の際に役立ち、心の安定にもつながります。
FP2級の資格を持ち、金融ライターとして活動する私が、貯金が馬鹿らしいと言われる理由や貯金が有効なケースを解説します。
人によって意見が違うのは当然ですし、私自身の考えを押し付けるつもりはありません。
自分にとって幸せなお金の使い方とは何なのか、考えるきっかけになれば幸いです。
「貯金が馬鹿らしい」とされる理由
「貯金が馬鹿らしい」と言われる理由は3つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由1.金利が低い
一つ目の理由は、金利が低いことです。貯金だけで資産を増やすことが難しくなっています。
次のグラフは、ゆうちょ銀行における普通預金の金利推移です。
参考:日本銀行「郵便貯金金利(2003年3月まで)」
株式会社 ゆうちょ銀行「民営化以前の貯金金利の沿革(平成19年10月1日〜)」[PDF]
1990年代初めには3%以上あった金利も、1995年にバブルが崩壊した影響で1%を下回りました。2008年にはリーマンショック、2016年にはマイナス金利が導入され、0.001%までに下がりました。
100万円を預けた場合、金利3%では利息で3万円が付きます。しかし、0.001%では10円しか付きません。金利が低いときに、金融機関に預けても利息が少ししかつかないことから、「馬鹿らしい」と言われるのです。
そもそもマイナス金利政策とは何だったのでしょうか?マイナス金利政策とは、日本銀行が民間の金融から預かる当座預金の金利をマイナスにするというもの。
なお、当座預金とは手形や小切手の支払いに使われる預金のことです。金利をマイナスにすることで、民間の金融機関が日本銀行にお金を預ける際、金利を負担しなければならない形にしました。
そうすることで、日本銀行に預けるのではなく、企業への貸し出しや投資にお金を回すよう促したのです。マイナス金利政策は、日本銀行と金融機関の間でおこなわれるもの。しかし、金融機関は私たちにもお金を預けるのではなく、使ってほしいという考えから預金の金利を引き下げていました。
日本銀行は、2024年3月にマイナス金利政策を解除しました。その影響を受け、現在は預金金利が上昇しつつあります。
事実、ゆうちょ銀行の普通預金金利も、2024年4月に0.001%から0.02%に引き上げられました。
理由2.お金の価値の低下
物価の上昇によって、貯金していたお金の価値が目減してしまうことも、「貯金するのが馬鹿らしい」とされる理由の一つ。
物価が上がるとお金の価値が下がるとはどういうことなのでしょうか。
ハンバーガーを例に考えてみましょう。1971年に販売が開始されたマクドナルドのハンバーガー当時の値段は80円でしたが、現在は170円(一部店舗・デリバリー除く)。
「もともと80円で買えていたものが170円になった」つまり、お金の価値が下がってしまったから、よりたくさんのお金が必要になったということです。
この現象が、金融機関に預けているお金にも起こります。
例えば、物価上昇率が毎年2%で、100万円を預けていた場合、20年後には約67万円までに価値が減少。物価の上昇率が高いほど、お金の価値が下がるスピードは早まります。
貯金をしていても、物価の上昇によって将来的にお金の価値が下がってしまうことから、貯金が「馬鹿らしい」と言われています。
現在の物価上昇はなぜ起きている?
現在の物価上昇は、ロシアによるウクライナ侵攻や国際的な原材料価格の高騰によるものです。
ロシアはエネルギーにおいて、世界有数の輸出国。「他の国に対して供給量を減らすのではないか」という懸念から、ヨーロッパなどではエネルギー価格の高騰が起きています。
ヨーロッパなどではロシアに頼らない政策を取り始め、その影響を受けて日本でもエネルギー価格が高騰しています。
また、円安も物価上昇の原因の一つ。日本は多くのモノを輸入に頼っているため、輸入する際のコストが増えると、その分、モノにコストが反映され、値段が上がるのです。
理由3.投資のほうがリターンが多い
投資のほうが高いリターンを期待できる可能性があることから、「貯金は馬鹿らしい」とされています。
過去のデータを見ると、株式や不動産などの投資は、預貯金よりも高いリターンを上げています。例えば金融庁によると、3パターンで毎年同じ金額を投資した場合、各年末時点での累積リターンは次のとおり。
・国内・先進国・新興国の株・債券に1/6ずつ投資 82.84%(年平均3.06%)
・国内の株・債券に1/2ずつ投資 50.28%(年平均2.06%)
・定期預金 0.71%(年平均0.04%)
定期預金が年平均で0.04%のリターンしか得られていないにも関わらず、投資した場合は年平均2%以上のリターンを得られています。このように投資したほうが高いリターンを期待できることから、「貯金は馬鹿らしい」と言われているのです。
参考:金融庁『「貯める・増やす」〜資産形成』[PDF]
貯金と投資の比較
物価上昇しているとき、お金の価値が下がってしまうことから、「貯金は馬鹿らしい」とされています。一方、投資は貯金と比べて高いリターンを期待できます。他にもどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
貯金は安全性が高い
貯金は、投資と比較して安全性が高いというメリットがあります。金融機関によって元本が保証されているからです。
例えば、100万円を預けたら、その金額から減ることはありません。また、万が一金融機関が破綻した場合でも、預金保険制度の範囲内であれば保護されます。
さらに、いつでも解約して現金化できる点もメリット。急な出費が必要になった場合でも、すぐに対応が可能です。
投資はリターンが見込めるがリスクがある
投資は先ほど説明したように、高いリターンを期待できます。しかし、元本割れのリスクがともないます。
元本割れとは100万円を投資しても、金融危機などによって100万円を下回る可能性があるということ。
とはいえ、先ほどの金融庁の報告にもあったように、長期的には高いリターンが期待できます。投資をおこなう際は、短期的ではなく、長期的な視点で考えることが大切です。
貯金が有効なケース
安全性と流動性が高いという特徴がある貯金。どういう場合に貯金が有効なのかを見ていきましょう。
緊急の場合
緊急資金としてのお金を用意する場合には、貯金が有効です。一般的に、生活費の3〜6カ月程度を貯金しておくといいとされています。
緊急資金は、次のような場合に役立ちます。
・失業や病気などによって収入が途絶えてしまったとき
・冠婚葬祭があったとき
・自然災害で被災したとき
病気で働けなくなってしまうと、収入が途絶えてしまいます。病気の治療をしながら、生活費の心配をしなければならないとなると、精神的にも大きな負担となるでしょう。
冠婚葬祭も、結婚式といったお祝い事は事前に日程がわかりますが、不幸はそうではありません。
さらに、日本は地震大国です。2024年1月に起きた能登半島地震により、5月21日現在でも3,598名の方が避難を余儀なくされています。(※)いつ大きな地震があるかわかりません。万一の場合に備えておきましょう。
※参考:国土交通省「令和6年度能登半島地震における被害と対応」[PDF]
短期的な目標のためのお金
短期で達成したい目標があるときは、貯金が有効です。具体的には、旅行や引っ越しなど。
旅行用の貯金を多めにすれば、より充実した旅行を楽しめるでしょう。引っ越しも、敷金・礼金や家具・家電の購入費など、まとまった金額が必要になります。
金額を決め、計画的に貯金することで、無駄遣いを防ぎ、目標達成に近づけます。
貯金以外の資産形成方法
貯金以外にどのような資産を育てる方法があるのでしょうか。選択肢が増えると、より自分に合った方法が見つけられます。ここでは5つ紹介します。
株式投資
株式投資とは、企業が発行する株式を売買することで、利益を得るものです。
株式とは、企業が投資家から資金を調達する際に発行する証券のこと。例えば、1,000円で買った株式を2,000円で売ると、差額の1,000円が利益となります。
また、株を保有することで、配当金や株主優待を受けられることもあります。
投資信託
投資信託とは、投資家たちから集めたお金を、資産運用のプロが株式や債券などに投資するもの。
株式投資の場合、自分で「どこの企業の株式を買うのか」「いつ売買するのか」を見極めなければいけません。しかし投資信託の場合、資産運用のプロが選定し、運用します。
また、1つの商品で国内外の株式や債券に分散して投資できるのも特徴。例えばよく「オルカン」と呼ばれる、「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」は、その名のとおり、全世界の株式に投資をする商品です。
2024年1月から始まった新NISAも、この投資信託を扱った資産形成の制度。通常、投資で得た利益に対して約20%の税金がかかりますが、新NISAでは無期限で非課税となります。
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不動産投資
不動産投資も、現在注目されている資産形成方法の一つです。わかりやすく言えば、アパートやマンションなどを購入して、大家さんになるということ。
建物を丸々購入する方法もあれば、マンションの一室だけを購入するという方法もあります。
大家さんになると聞くと、管理が大変そうと思われるかもしれません。しかし、管理は不動産管理会社に依頼できるため、副業で始める方も増えています。
また、投資信託のように、投資家から集めたお金を、プロが不動産に投資するという方法も。一口に不動産投資と言っても、さまざまな方法があります。
金
「有事の金」と呼ばれるほど、金はインフレや経済不安の際に、価値が上昇する傾向があります。
ラウンジデザイナーズによると、2022年4月には史上最高値の8,860円/gを記録。その後も上がり続け、2024年6月現在は1万3,049円/gにもなっています。
金は形があり、それ自体に価値がある実物資産。政府や中央銀行の信用に左右されることはありません。
金の投資方法には、次の3つがあります。
・実物資産を購入する:金地金(インゴット)、金貨を購入する方法
・純金積立をする:毎月決まった金額で、金を購入していく方法
・金を扱った投資信託を購入する:金を対象とした投資信託を購入する方法
いろいろな方法があるため、自分に合ったものを検討しましょう。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産(仮想通貨)は名前をよく聞くけど、わからないという方も多いのではないでしょうか。暗号資産(仮想通貨)には、日本円やドルのように、紙幣や硬貨がありません。
管理者がおらず、取引情報をネットワーク上でまとめています。例えば、「AさんからBさんへ1BTC送金した」(BTCはビットコインの単位)という取引情報を、ネットワーク上で記録。
そして10分間の取引情報を一つのブロックとしてまとめ、鎖のように繋いでいます。これがブロックチェーンと呼ばれる技術。
もし取引情報を改ざんする場合には、1つのブロックだけでなく、すべてを書き換えなければなりません。現実的に改ざんが不可能であるため、この仕組み自体が信用に値します。
繰り返しになりますが、投資は貯金と違い、リスクがともないます。
リスクを許容できる範囲、余裕資金でおこなうことが大前提です。どの程度までリスクを許容できるのか、投資できる資金はどれくらいあるのか、よく考えてから取り組みましょう。
自分らしくお金と付き合うためのポイント
「もう少しあれば楽になるのに」「ローンの返済で精一杯」など、日々お金に関して悩んでいないでしょうか。なかには、それなりにお金があるにも関わらず、振り回される方がいます。
ここではお金とどう上手に付き合うか、ポイントを解説します。
お金に対する価値観を考える
「あなたにとってお金とは何ですか?」この質問に答えられる方はどれくらいいるでしょうか。
自分にとって、お金とはどういうものなのか、価値観がハッキリしていれば、何にお金を使うのかも自然と基準ができていきます。
どういうお金の使い方をしたときに満足感を感じるのか、考えてみましょう。
なぜ貯金するかを考える
貯金する理由は人それぞれです。例えば、「目標を達成するため」や「将来への備えのため」などが考えられます。
「推し貯金」という言葉もよく聞くようになりました。仕事や学業を頑張るために、推し活に励んでいる方もいるでしょう。
「グッズは全部買いたい!」という方もいれば「イベントに参加できれば十分」という方もいます。
貯金したお金で何をしたいのか具体的に考えてみましょう。そうすると、そのためにはいくら必要なのか、いつまでに貯めればいいのか、具体的に何をすればいいのかが見えてくるでしょう。
資産配分を考える
資産配分とは、保有する資産の種類や割合を決めること。資産配分を適切におこなうことで、リスクを抑えながら効率的に資産を増やせます。
これまで見てきたように、貯金だけではお金の実質的な価値は減っていきます。そのため、適切なリスクを取りながら、投資をおこなうことが重要です。
株式や債券、不動産など、いろいろな資産に分けて投資することで、リスクを抑えられます。
繰り返しになりますが、投資にはリスクがともないます。必ず、余裕資金でおこなうようにしましょう。
また、長期的な視点でおこなうことも大切です。今では少額からできるもの増えているため、まずはリスクを許容できる範囲から始めましょう。
まとめ
今回は、貯金が「馬鹿らしい」と言われる理由を解説しました。
金利が低いことから、金融機関に預けても利息が少なかったり、物価上昇時では実質的な価値が下がったりすることから、「馬鹿らしい」と言われます。
しかし、収入が減ってしまったときや災害に遭ったときなど、万一の際には貯金が有効です。また、旅行や引っ越しなど、短期的な目標がある場合も貯金のほうが適しています。
とはいえ、物価が上昇している今、貯金だけでなく、株式投資や投資信託などの投資を取り入れることで、効率的に資産を増やせます。
投資にはリスクがともなうことから、余裕資金でおこなうようにしましょう。また、ご自身のリスク許容度を知ることも大切です。