国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、女性の平均給与は316万円となっています。年収600万円となれば、平均の2倍近くあることに。新NISAやiDeCoはすでに取り組んでいて、他にも資産運用をしたいという方もいるでしょう。そこでおすすめしたいのが、不動産投資です。
本記事では、女性に不動産投資がおすすめな理由や節税にならないと言われる理由、収支シミュレーションをおこないます。しかし、不動産投資は短期で収益を上げるものではなく、長期的な視点が必要です。これから不動産投資を始めたいと考えている女性の方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.不動産投資が女性におすすめな理由
まず、不動産投資がなぜ女性におすすめなのか、理由を4つ解説します。
1.1.生活に適した物件選びができる
不動産投資が女性におすすめな理由は、生活に適した物件選びができるからです。不動産投資で安定した家賃収入を得るためには、適切な物件選びが欠かせません。
もし物件に魅力がなく、入居希望者が集まらなければ、家賃収入そのものが得られません。また、収納スペースが少なかったり、生活動線が悪かったりすると、生活を送るうえで不便を感じ、退去する可能性もあります。
1.2.結婚や出産の影響を受けにくい
結婚や出産の影響を受けにくいことも、女性に不動産投資をおすすめする理由の一つです。女性は結婚や出産によって、大きくライフスタイルが変化します。
特に出産は、生活に大きな影響を与えるライフイベントの際たるものでしょう。一定の条件を満たせば、育児休業手当(給付金)が支給されますが、働いていたときよりも減ってしまいます。収入が減るなかで、おむつや粉ミルクなどの出費が増えていき、家計の変化に不安を覚える方も多いでしょう。
しかし、不動産投資で安定した家賃収入を得られていれば、大きな変動はありません。信頼できる管理会社に管理業務を委託すれば、大きな手間や労力をかけなくても、継続して家賃収入を得られるでしょう。このように、不動産投資は結婚や出産の影響を受けにくい点が女性におすすめする理由です。
1.3.寿命が長い傾向にある
不動産投資を女性におすすめする理由として、寿命が長い傾向にあることも挙げられます。厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によると、男性の平均寿命が81.09歳に対し、女性は87.14歳。65歳で定年退職を迎えたとすると、約22年もの間、年金がメインの収入源となると考えられます。
年金だけでは厳しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そこで資産形成の選択肢の一つとなるのが、不動産投資です。不動産はインフレに強く、物価が上昇しても、それに伴い家賃も値上げできることから、安定した収入を期待できます。
また、投資用ローンを完済すれば、購入した物件は資産となる点もメリット。ローンの返済負担がない状態で家賃収入を得られれば、安定した収入源となるため、老後の不安が解消されるでしょう。
1.4.利用できる優遇制度がある
女性に不動産投資をおすすめする理由として、女性だからこそ利用できる優遇制度がある点が挙げられます。
財務省が管轄する政府系金融機関の「日本政策金融公庫」では、資金開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)の融資をおこなっています。概要は次のとおり。
利用対象者 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方 |
資金用途 | 新たに事業を始める際や事業開始後に必要とする設備資金・運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
出典:日本政策金融公庫「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」
不動産投資を始める際には、初期費用がかかります。一般的に、購入する物件の15%程度が目安。例えば、購入する物件が5,000万円だった場合、初期費用として約750万円が必要です。融資を受けられれば、不動産投資を始める際のハードルが低くなるでしょう。
2.年収600万円ある女性は不動産投資をするべき?
不動産投資は節税対策になると聞いた方もいるでしょう。しかし、一方で「節税にならない」という声もあります。年収600万円の場合、節税効果を得られるのでしょうか。本章では、不動産投資が節税にならないと言われる理由、年収600万円の場合の節税シミュレーションをおこないます。
2.1.不動産投資が節税にならないと言われる理由
不動産投資が節税にならないと言われる理由はなぜでしょうか。その理由は、次の2つです。
・赤字でないと損益通算できない
・年々節税効果はなくなる
それぞれ詳しくみていきましょう。
2.1.1.赤字でないと損益通算できない
損益通算とは、不動産所得や事業所得の赤字を給与所得の黒字と相殺すること。相殺することで課税所得が低くなり、結果として納める税金も抑えられます。
例えば、給与所得が600万円で、不動産所得が100万円だった場合。このケースでは、合計した700万円に対して課税されるため、給与所得のみのときよりも納めるべき税金が多くなります。
しかし、給与所得が600万円で、不動産所得の赤字が200万円だった場合。このケースでは課税所得が400万円となり、税金は安くなります。つまり、不動産所得が赤字でなければ、損益通算による節税効果が得られません。
2.1.2.年々節税効果はなくなる
不動産投資による節税効果が年々なくなる点も、「節税にならない」と言われる理由の一つです。なぜ年々節税効果はなくなっていくのでしょうか。その理由は3つあります。
・投資用物件購入に関する経費は初年度のみ計上できる
・不動産投資ローンの利息が減っていく
・減価償却期間が決まっている
それぞれ詳しくみていきましょう。
2.1.2.1.投資用物件購入に関する経費は初年度のみ計上できる
投資用物件の購入にかかった経費を計上できるのは、初年度のみとなります。不動産投資における初期費用の相場は物件価格の約15%。例えば、6,000万円の物件を購入した場合、約900万円を経費として計上できます。
また、初年度は家賃収入も少ないため、赤字になることが一般的。損益通算により、節税効果の恩恵を受けられるでしょう。しかし、2年目以降は初期費用がなく、経費計上できる金額が少なくなります。そのため、節税効果が一番高くなる年は不動産投資を始めた年ということになります。
2.1.2.2.不動産投資ローンの利息が減っていく
不動産投資で経費として計上できる費用に、不動産投資ローンの利息があります。これも、ローンを返済するほど元本が減っていくため、計上できる利息も減っていくことに。計上できる金額が減れば、当然節税効果もなくなっていきます。なお、元本は経費計上できない点に注意しましょう。
2.1.2.3.減価償却期間が決まっている
減価償却期間が決まっている点も、節税効果がなくなる理由の一つです。減価償却とは、建物といった高額な資産を購入する際にかかった費用を、法定耐用年数に応じて計上すること。法定耐用年数は建物の構造によって異なっており、次のようになっています。
建物の構造 | 法定耐用年数 | 償却率 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 47年 | 0.022 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | ||
金属造(4ミリを超えるもの) | 34年 | 0.03 |
木造 | 22年 | 0.046 |
木骨モルタル造のもの | 20年 | 0.05 |
参考:国税庁「減価償却資産の償却率表」
例えば、木造のアパートを購入した場合、減価償却できる期間は22年。減価償却費に償却率をかけて、計上できる費用を計算します。
6,000万円×0.046=276万円
この場合は22年間、276万円を減価償却費として計上できます。しかし22年目以降は、この276万円を計上できなくなるため、その分所得が増えることに。所得が増えれば税金も増えるため、節税効果はなくなります。
このように、不動産投資による節税効果は初年度が一番高く、年々薄くなっていくものです。そのため、「節税にならない」と言われます。
2.2.年収600万円の女性が不動産投資をしたときの節税シミュレーション
年収600万円の女性が不動産投資をすると、節税になるのでしょうか。本章では、年収600万円の場合のシミュレーションをおこないます。なお、条件は次のとおりです。
<条件>
物件価格:3,500万円(木造・法定耐用年数22)
初期費用:300万円
頭金:500万円
ローンの返済額:9万9,379円
借入金額:3,000万円
金利:2%
借入期間:35年
年間家賃収入:576万円(8万円/月×6戸)
諸経費率:20%
空室率:15%
減価償却費:3,500万円×0.046=161万円
まずは、空室率を考慮した年間の家賃収入を計算してみましょう。
576万円×85%=489万6,000円
次に、年間の必要経費を計算します。年間のローン返済額は次のとおりです。
9万9,379円×12カ月=119万2,548円
諸経費は下記のように計算できます。
576万円×20%=115万2,000円
合計の必要経費を計算します。
119万2,548円+115万2,000円=234万4,548円
最後に、年間の家賃収入から必要経費を引いた、手元に残る収入を計算します。
489万6,000円ー234万4,548円=255万1,452円
この条件の場合、年間255万1,452円の収入が得られる計算となりました。
2.2.1.初年度
まずは初年度の節税効果がどれくらいあるかをシミュレーションしてみましょう。初年度は、諸費用と頭金を合わせて800万円の支出があるため、不動産投資による所得は次のように計算できます。
また、減価償却費を経費として計上できるため、先ほど計算した不動産所得から差し引くことができます。
255万1,452円ー161万円ー800万円=ー705万8,548円
次に、給与所得の計算をおこないます。給与所得の計算式は次のとおり。(社会保険料控除を年収の15%と仮定)
給与所得=給与収入ー(基礎控除+給与所得控除+社会保険料控除)
年収600万円の場合の給与所得は次のように計算します。
600万円ー(48万円+164万円+90万円)=298万円
最後に、給与所得と不動産所得を合わせた課税所得、それに対する所得税を計算してみましょう。
298万円ー705万8,548円=ー407万8,548円
今回のシミュレーションの場合、約407万円の赤字となったため、所得税はかかりません。
給与所得のみだった場合の所得税は約20万円のため、その分節税できたことになります。
2.2.2. 2年目以降
次に、2年目以降の節税効果がどうなるのかをシミュレーションしてみましょう。初年度と違い初期費用や頭金がないため、不動産所得は次のようになります。
255万1,452円ー161万円=94万1,452円
給与所得と不動産所得を合わせた課税所得を求めます。
298万円+94万1,452円=392万1,452円
最後に、所得税を計算してみましょう。
392万1,452円×20%ー42万7,500円=35万6,790円
今回、不動産所得が黒字だったため課税所得が増え、それにともない所得税も増えました。不動産投資による節税効果は初年度が高い、ということが理解いただけたことでしょう。
しかし、空室で家賃収入が減ったり、諸経費が多かったりすると赤字となり、税金が少なくなる可能性もあります。
3.女性が不動産投資を始める際の注意点
女性が不動産投資を始める際、気をつけなければならないポイントがあります。後悔しないためにも、しっかり押さえておきましょう。
3.1.扶養から外れる必要がある
扶養に入っている女性の場合、得られる収入の合計額にもよりますが、場合によっては扶養から外れる必要がある点に注意しましょう。扶養から外れると、次の3点で負担が増える可能性があります。
・所得税や住民税の負担が増える
・社会保険料の負担が増える
・夫の勤務先によっては配偶者手当が受けられなくなる
不動産投資によって所得が増えると、配偶者控除の対象外となる可能性も。控除が受けられなくなると、所得税や住民税の負担が増えます。
また、夫が会社員だった場合には第3号被保険者となり、夫が代わりに国民年金を負担しています。もし扶養から外れた場合、国民年金や国民健康保険を自身で負担する必要が出てくるでしょう。
最後に、夫の勤務先に配偶者手当があった場合。不動産投資によって所得が増えると、手当が廃止される可能性もあります。このように、所得が増えることで、税金や社会保険料の負担が増えるおそれがあるため、シミュレーションをおこなうことが大切です。
3.2.資金調達が難しい場合がある
女性が不動産投資をおこなう際、資金調達が難しい場合があることも理解しておきましょう。不動産投資を始める際には、投資用ローンを組むことが一般的です。しかし、投資用ローンを組むためには、安定した収入があることが条件となります。
例えば、SMBC信託銀行の「不動産投資ローン」では、前年度の年収が700万円以上であることが申込条件となっています。しかし、先述したように、日本政策金融公庫のように女性だからこそ受けられる優遇制度もあります。うまく活用し、不動産投資を始めましょう。
4.女性が不動産投資で成功するためのポイント
女性が理由で不利になることもある不動産投資ですが、ポイントを押さえれば、資産運用の一つとして魅力的な選択肢となりえます。本章では、女性が不動産投資で成功するためのポイントを5つ解説します。
4.1.不動産投資の知識を身に付ける
まずは、不動産投資の知識を身に付けましょう。不動産投資で成功するためには、物件選びが成功の鍵を握ります。立地や築年数、設備など、さまざまな要素を考慮し、入居者にとって魅力的な物件を選びましょう。
また、不動産投資をおこなう際には、固定資産税や都市計画税などの税金もかかります。これらの知識を押さえておかなければ、「思っていたより収入が少ない……」と後悔しかねません。基本的な知識を押さえておくことで、安定した不動産投資がおこなえるでしょう。
具体的な勉強方法としては、次の方法があります。
・セミナーに参加する
・書籍を読む
・インターネットで調べる
幅広く情報収集をおこなうことで、偏りのない知識が身に付けられるでしょう。
4.2.不動産投資の目的を明確にする
不動産投資をおこなう際には、目的を明確にすることも重要です。なぜなら、目的によって適切な投資戦略が変わるからです。
例えば、安定した収入源を得たい場合。立地がよく、安定した入居率を見込める物件を購入する必要があります。一方、節税をしたい場合には、減価償却費を多く計上できる区分マンションが適しているでしょう。
このように、不動産投資をする目的によって、適切な物件も異なります。何のために不動産投資をおこなうのか、目的を明確にしておきましょう。
4.3.リスク対策をおこなう
不動産投資をする際には、リスク対策をおこないましょう。不動産投資は「投資」である以上、さまざまなリスクがともないます。例えば、次のようなリスクがあります。
・空室リスク
・金利上昇リスク
・自然災害リスク
空室リスクとは、入居者が決まらず、空室期間が生じ、家賃収入が減少するリスクのこと。家賃収入が減少しても、投資用ローンの返済といった負担をしなければならないため、経営状況に大きな影響を与えます。
金利上昇リスクとは、投資用ローンの金利が上昇し、返済額が増えるリスクのこと。毎月の返済額が増加すると、実際に得られる家賃収入が減少する可能性があります。
最後に自然災害リスクとは、台風や地震などの自然災害によって、投資用物件が損傷したり、入居者に損害賠償をしなければならないリスクのこと。これらのリスクはほんの一部です。
しかし、リスクが事前にわかっているため、対策を取ることが可能です。例えば、空室リスクを軽減するためには、安定した入居率を見込める物件を選ぶことが大切です。
金利上昇リスクを抑えるためには、できるときに繰り上げ返済を返済をおこない、元本を減らすことが一つの対策となります。自然災害リスクは、損害保険への加入によって、万が一の場合の損失を軽減できるでしょう。
不動産投資におけるリスクを把握し、対策をおこなうことが、成功するためのポイントです。
4.4.利回りだけで物件を選ばない
投資用物件を選ぶ際には、利回りだけで選ばないようにしましょう。利回りとは、物件価格に対して、1年間でどれくらいの収益を出せるのかを割合で表したもの。つまり、物件価格が安く、家賃収入が高ければ、高い利回りとなります。
高い利回りの物件は魅力的ですが、利回りだけで物件を選ぶと、思わぬ損失を被る可能性も。例えば、中古のアパートを購入し、満室だった場合、新築と比べて高い利回りとなります。しかし、中古のため、修繕費やメンテナンス費がかかり、実際には収益を得られないかもしれません。
このように、利回りだけで物件を選ぶと、想定したよりも家賃収入が得られないおそれがあります。投資用物件を選ぶ際には、利回りだけでなく、幅広い観点から適切な物件を探しましょう。
4.5.信頼できる不動産会社を見つける
女性が不動産投資で成功するために、信頼できる不動産会社を見つけましょう。これまで見てきたように、不動産投資はさまざまな専門知識や経験が必要です。すべてを一人で補うには、時間も労力もかかるでしょう。信頼できる不動産会社を見つけることで、適切なアドバイスを得られます。
例えば物件選びの際には、不動産市場の動向を踏まえ、豊富な物件情報のなかから、適切な物件を紹介してもらえるでしょう。専門知識や経験が豊富な不動産会社をサポーターにすることで、不動産投資で成功する確率を高められます。
自分に合った不動産会社を選ぶためにも、複数社を比較検討することが大切です。具体的には、次のポイントをチェックしましょう。
・実績が豊富である
・評判がいい
・担当者の対応が丁寧である
・自分が求めるサービスを提供している
・手数料がサービス内容に見合っている
自分に合った不動産会社を見つけることで、より安全で収益性の高い不動産投資が可能になるでしょう。
5.まとめ
本記事では、不動産投資を女性におすすめする理由を解説しました。女性は長生きする傾向にあり、不動産投資はインフレ対策になることから、資産運用の一つの方法としておすすめします。
また、女性だからこそ生活に適した物件選びができる点や、優遇制度を受けられる点も、おすすめする理由です。
しかし、収入によっては税金や社会保険料の負担が増える可能性もあります。信頼できる不動産会社を見つけ、適切なアドバイスを受けられれば、専門知識や経験を補いながら、安定した不動産投資ができるでしょう。